コーヒー豆は湿気らない。
「やっぱりあなたの淹れてくれた苦いコーヒーが一番好き♡」
「ハニーが甘すぎるから苦いくらいがちょうどいいのさ♡」
……そう、二人の恋はまるで積み重ねたハーモニーだったのに!
実は……酸っぱいコーヒーが大好きだったなんて‼︎
「私だって流行り好きな日本人なの! スペシャリティコーヒーといえばやっぱりブルーマウンテンなの! 酸味が強いのが好きなんだもん、みんなそうでしょ?
私、マリッジブルーで気づいてしまったのよ……私、ローストもお付き合いも浅めがよかったのよ、ホントは!」
私、マリッジブルーで気づいてしまったのよ……私、ローストもお付き合いも浅めがよかったのよ、ホントは!」
今朝、とあるカフェでの、
突然の妻からの告白に、俺は青ざめた。
ジーザス! なんてこった!
昔アラブの偉いお坊さんからもらった琥珀色した飲み物で目覚めた恋物語が、まさか1杯のコーヒーを飲む間に終わってしまうなんて……神様が淹れたコーヒー(人生)はなんて深く、そしてほろ苦いんだ……
そして今日、俺はもう人のためにコーヒーを淹れないと決めたんだ。
俺の涙で、もう豆を湿気らせないために……
(fin)
(なんじゃこりゃ)